きただけで、多分、業界全体のファンは増えていません。全体のパイを増やしていくことが大事なんです。そのためにゲーム性を上げることは一番大事なポイントですが、この時代にネットにもつながらないのは問題です。今の若者は基本的にネット社会で生きていて、例えばTikTokで流行った曲がヒットすることはあっても、それがCDの販売につながってはいきません。その様な状況でいくら遊技機を良くしても、オフラインで完結する状態では、若者のファンを増やすのは難しいと個人的には思っています。もちろん、これからスマスロやスマパチ(スマートパチンコ)によって客離れが下げ止まり、少し増えていく可能性は十分あると期待しています。ただ、今の若者にとって「パチンコ屋さん」は敷居が高く、行きにくい場所になってしまいました。我々が若い頃は、タバコを 9 吸いながらお酒を飲む大人の男の「ちょいワル」な感じが格好良くて憧れていましたよね。パチンコ店も、そんな先輩に連れて行ってもらって通い始めた等ということが多かったと思うのですが、今はそんな若者は皆無です。ただこの数年見ていると、アニメやアイドルとのタイアップは、そんな若者がホール様に足を踏み入れるきっかけになっていると思います。これは映画館の状況にも似ています。映画館も客足が減っている中、特殊な映画やアニメ作品で動員数を上げる単館が現れ、それを繰り返しながら集客数を上げていくことが映画館を復興させる一つの手立てとなりました。その後、アニメでも大ヒットする作品が出る時代になると、今度はバットマンやスパイダーマンの様な懐かしい作品のリメイクに注目が集まって流行るという傾向も見られるようになっています。つまり我々の業界も、時代に合わせた新しい物に人気が集まれば、古き良き時代の物が目立って再び流行るということがあると思うんです。ホール様を料理屋さんに例えるなら、遊技機は料理です。ネタが良くなり料理が美味しくなっても、まず一度足を運んでもらい、味を知ってもらって来店数を上げていくことが必要だと強く感じています。広告戦略としては、中高年層に向けてテレビCMを使ったイメージアップも今期から始めていきます。一方で、若者層に向けては他の業種の様にネットを使った手法にもチャレンジしていきたいですね。そのためにはルール変更も必要ですが、今できることもまだたくさんあると思います。令和2年のことですが、日工組は大正大学との共同プロジェクトとして、パチンコ未経験の学生20人にパチンコを体験してもらったところ、1、2割はリピーターになったという実証結果があります。今は日遊協でも様々な大学のサークルと連動するという試みを行っているそうです。これは地道でゲリラな戦法かもしれませんが、遊技機に触れる人数を増やせばそれだけファン層を増やせることになるということです。テレビCMやネット戦略にあわせて、そういった地道な活動で一人でも多くの人に遊技機に触れてもらいたいと思っています。特別企画【特別対談】 遊技業界の今後とパチスロの展望について
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